オトナのオトモ日記

モンハンを主軸とする、ゲームブログです。小説も書いたり、たまに映画鑑賞日記も。雑食性です。

レーシェンの生態

モンスターの生態 - ハーメルン

また、モンハンを題材にしたお話"モンスターの生態"を書いてみました。今回はコラボモンスターのレーシェンの生態です。


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古代樹に現れるレーシェン。でも、『門』とやらで召喚するように突如出現する上に、戦闘の真っ最中でも長距離のワープをします。

これらの生態から、『レーシェンって、アステラの門を通り越していきなりアステラ内部に出現してもおかしくないんじゃ・・・・?』と、考えて思い付いたのがこのお話。

また、湯たぽんはあまりレーシェン討伐経験がないので、ベテランレーシェンハンターの狩り友、真田さんとそのオトモの真田丸君にも登場してもらいました。ありがとう!

今回は前中後の三編にわかれます。

 

今日のところは前編を、どうぞ。

 

 

遺存種の生態と古代樹の暴走(前編)

 

遺存種 レーシェン。『門』と呼ばれた謎の力場によって新大陸に引き寄せられたモンスターである。
レーシェンと共に門で引き寄せられてきた魔法を駆使する狩人、ゲラルトによってもたらされた情報と技術で、新大陸のハンターにも有利な戦いが出来るようになった。何度かのレーシェン襲来、さらに強個体の出現もあったが、いずれにも遅れを取ること無く、新大陸の生態系はハンターによって守られてきた。

だが、いつも上手くいくとは限らないと警鐘を鳴らす者が居た。

「つまり、レーシェンがここ調査拠点アステラ内部に出現する可能性がある、ということか?」
新大陸調査団、大きく分けて5つある団を統括しているのが、褐色の肌に銀髪の『総司令』だ。簡素な動きやすい革製の鎧を常に着込み、腕組みしたまま槍のように真っ直ぐな姿勢を少しも崩すことなく直立不動。40年前の発足当時から新大陸調査団を見てきた、ベテラン中のベテランである。

「その通りです、総司令。今までのレーシェンの出現報告は全て古代樹の森の中央部、第12エリアからですが、戦闘の真っ最中でも突如姿を消し、かなり距離を挟んだ全く別の場所に出現する事が知られています」
総司令に対し意見を述べているハンターは、スズナ。現大陸の各地で活躍したハンターであり、新大陸ハンターのユタの姉である。マタタビの栽培が出来ない新大陸への渡りを、愛するオトモネコ達のためを思いためらっていたが、ついに我慢しきれず新大陸からの連絡船に飛び乗って来てしまった。

「この、レーシェンが姿を消してから再度出現するまでの間、どれだけの距離を移動する事が可能なのか判明していない以上、このアステラ内部に侵入してくる可能性も検討すべきです」
背中まで伸びるさらりとした金髪に、おっとりとした垂れ気味の大人しげな眼。あまり我を主張しないように見られがちな外見のスズナだが、レーシェンの調査レポートに眼を通すや否や総司令に直訴しに現れた。

「・・・・で。君がスズナに連れてこられたということは、問題は単にレーシェンの生態に限らない、ということだな?植生の。」
と、総司令がスズナから視線を変えた先に居たのは、スズナに引きずられるようにして連れてこられた竜人族の男だった。
尖った耳に丸メガネ。枯草色のナイトキャップのようにも見える頭巾を被った『植生研究所所長』。いつも無責任に笑っている、つかみどころの無い男だが、今日は若干不機嫌そうに見えた。

「あ〜・・・・うん、そうなんです総司令。レーシェンがここアステラを目指す可能性は、たしかにあるんです。それに気付いたのが僕じゃなくて新大陸に着いたばかりのルーキーだってのが気にくわないけど、ね」
不機嫌の理由はプライドが関係しているようだ。

「根拠は」
言葉少なめに、総司令。状況を迅速に正確に把握するため、緊急かつ重要な案件と判断すると彼は急に口数が減る。
総司令に促されると、丸メガネの所長はコートのポケットから焼け焦げた樹の枝を取り出した。両手に一本ずつ、二本だ。

「こちらが、レーシェンから剥ぎ取った枝片。もう一本が・・・・」
二本の枝は全く同じ見た目で、見分けがつかない。どちらかを示す印が付けられているらしく、慎重に確認しながら、所長はもう一本を持ち上げる。

「すぐそこにある、植生研究所で栽培している古代樹の枝です」
ぴくり。所長が言うや否や、総司令の組まれた両腕が跳ねた。

「古代樹に反応して空間移動するということか!?」
珍しく表情を変えて吠えた総司令を目の当たりにして、性格の悪いことに多少気を良くしたらしい。植生研究所長は分かりやすくトーンを上げて話を再開した。

「というより、レーシェンは空間移動するごとに古代樹の幹や根で身体を構成し直しているようだね。これら二本の枝には全く差異がない。レーシェン、イコール古代樹とも言えるんです。古代樹がある場所に空間移動するとなれば、アステラ内の植生研究所のあの古代樹がレーシェンの依り代になる可能性は、あるね」
人との関わりに興味を示さないことで有名なこの所長。総司令に対しても敬語を使ったり使わなかったりと適当な物言いで自分のペースを崩さない。
が、今日はそのペースを乱した女が1人この場に居た。

「レーシェンがアステラの古代樹を基に身体を構成した場合、森とはまた違う性質が発生する可能性もあります。手遅れになる前に手を打つべきでは?」
丸メガネを押し退け、珍しく熱弁をふるいはじめたスズナには、調査拠点アステラの防備を固めレーシェンから護るという使命感の他に、もうひとつの狙いがあった。

「その通りだ。すぐ植生研究所にレーシェン討伐経験のあるハンターを常駐警備に充てよう。四時間毎の交代で1名ずつ。さらに本国に宛ててモンスター避けの資材輸送要請を出す。アステラ内部の各所と、植生研究所周辺にもモンスター避けの塗料を塗布する」
総司令があっという間に指令を出すが、なおもスズナは意見を続ける。

「ことはレーシェンだけの問題ではありません。新大陸の調査が大幅に進んだ今、新キャンプの設営や、いっそ新たな第2の調査拠点が必要になることもありえます」
らしくないスズナの熱弁の理由こそ、次のセリフに集約していた。

「モンスター避けは、今後アステラでも生産出来るようにすべきです」
総司令にぐっ・・・・と顔を近付け、真剣な眼差しで訴えるスズナ

"モンスター避け"とは、ハンターがクエスト基地として利用するキャンプや、街の外壁に用いられる特殊な塗料の事である。ゾラ・マグダラオスラオシャンロンのようなよほどの超大型種でない限り、飛竜種甲殻種牙獣種さらには古竜までも、ありとあらゆるモンスターの感覚を著しく刺激し近付けないようにする。レーシェンは別世界の存在だが、レーシェンがキャンプに浸入したという報告は無い。キャンプ資材に塗布されているモンスター避けが効果を発揮したと考えるべきであろう。
だが当然、それほどの効果を発揮する代物を街ひとつ包むほどの量生産するのは容易ではなく。その上・・・・

「無理だ。モンスター避けは"古竜の血"と、銀火竜の"煌炎の雫"を調合して発酵させる必要がある。古竜の血はここでも集められるが、銀火竜リオレウス希少種は現在新大陸では発見されていない」
残念そうに、しかしいつも通りきっぱりと断ち切る総司令だったが、これもスズナにとっては計画通り。怯むことなく総司令にさらに詰め寄った。

「でも火竜・リオレウスは居ます。希少種素材である、煌炎の雫は我々通常のハンターでは剥ぎ取る事は出来ませんが、私の友人に、この問題を解決する可能性のあるハンターがいます」
この、友人を新大陸へ招き入れる事こそ、スズナの狙いだった。

「『ハギトリ スタイル』という、任意の素材を選択して剥ぎ取れるスタイルを持つギルドナイト、リリィです。彼女ならこの新大陸のリオレウスでも、希少種素材である煌炎の雫を剥ぎ取れるかもしれません」
モンスターの素材を、必要なものだけ選択して剥ぎ取れる。一頭から天鱗を4枚剥ぎ取って帰ってくる事すら可能な能力を持つリリィという少女がスズナの友人であり、今回のこのスズナの行動の主たる原因である。

『新大陸にあたしも行きたいのに、ギルドが許してくれない』
そう言って全身全霊でむくれるリリィのために、スズナが一肌脱ごうとひと芝居うったのが、今回の直訴なのだ。もちろん、レーシェンの生態が気がかりだというのも本音ではあるのだが。

「ハギトリ スタイルだと?向こうにはそんな技術があるのか」
案の定、総司令は食い付いてきた。どこから取り出したのか、分厚い書類束に素早く目を走らせながらつぶやく。

「ゾラ・マグダラオスの障壁作戦以降、いまだに資材、素材不足から解放されていない。仮にハギトリ スタイルで煌炎の雫を集めることが出来なくても協力を要請する価値はあるな・・・・」
独り言ですら通りの良い声。総司令はさらに調査団のメンバー表らしき書類も取り出すと、ほんの数秒だけ、今度は黙って目を閉じ考えに没頭した。
すぐにカッと目を開くと、白紙とペンを取り出しスズナへと向き合う。

スズナ。リリィの詳しい所属は分かるか?」

「はい。ギルドカードがあります」

「好都合だ。渡航要請を出そう。どうせ、リリィ本人に頼まれてこの話を持ってきたのだろう?本人も新大陸調査団に加わる意思を持っている、で良いな?」
完全に見透かされていたが、おおむねスズナの考え通りに話が進むようだ。なんとも手際よく対レーシェン警備の命令書とリリィの渡航要請書を手書きで作成し始める総司令。対してスズナはほっと一息。そしてこの場に居たもう1人は・・・・

「あー・・・・スズナ君?ほっとしてるとこ悪いんだけどさ」
植生研究所の所長だった。話し合いの中心から外れ、あっさり興味を失ったようでレーシェンの枝で1人遊びをしていたが、何やら妙なモノを発見したようだ。
調査団の会議用大テーブルのすぐそば、調査団ハンター達が居室として利用している建物(元は新大陸へ渡航した時の船だ)の入口を、所長は指差している。

「あそこ。アレ君んとこのオトモじゃないかい?」
指の先に居たのは、スズナのよく知る白黒の毛並みのオトモ猫だった。