オトナのオトモ日記

モンハンを主軸とする、ゲームブログです。小説も書いたり、たまに映画鑑賞日記も。雑食性です。

レーシェンの生態 中編

レーシェンのお話、僕にしては少し長めなので、今日は続きを。ちなみに、前編で出てきた"モンスター避け"は僕の創作です。公式でのキャンプや街の防壁の扱いはどうなっているのでしょうね?詳しい方いらっしゃいましたら是非教えて下さい。

 

さて、前置きはこのあたりまでで。それでは続きをどうぞ。

 

 

 

部屋から出てきたのはオトモ猫だった。ただしスズナのオトモであるナダレではなく、オモチだ。

「あ、いえ・・・・アレは私のではなく、弟のユタのオトモ、オモチです。が・・・・」
答えながらスズナも異変に気付いた。

「あ、そっか5期団君のオトモだったっけ。あれ・・・・なんか変じゃないかい?大丈夫?」

オモチは、何やら足元がふらついていた。しかし体調が悪いわけではなさそうだ。満面の笑みで、上機嫌に唄を歌っている。

「はっは〜ぁ、びーばのんのん♪ニャーあニャーァ♪」
なんとも適当な、しかも場面に則していない唄だが。何故か少し鼻声で歌うオモチの鼻から、何か妙なものが刺さっているように見えた。スズナと植生研究所長に釣られて、書類から眼を離してオモチの方に気を取られた総司令が、ぽつりと呟くのが聞こえた。

「枝・・・・?が刺さっているのか、五期団のオトモアイルーの鼻に」
職業柄なのか何を言うにも分かりやすい説明口調になる総司令だが、この奇妙な状況では疑問符が付属せざるを得ない。が、スズナにはすぐにぴんときたようだ。

「あーっ!!!?オモチ、マタタビスティック鼻に刺してる!?」
普段からしまりのない大きな口をさらに極限まで開いてスズナが絶叫する。新大陸へ渡ってきたときにオモチに渡したお土産だった。新大陸ではオトモ猫の大好物、マタタビがいまだ発見されていない。生態系を崩さないことを重視するため栽培も許されないので、種の持ち込みも制限されているが枝はお土産として持ち込むことができた。
が、当然鼻に刺す用途は想定されていない。

「ふニャッは〜ぁ♪」
マタタビに酔いに酔ったオモチは階段をなんとも痛そうな体勢で、しかしなんとも楽しそうに転げ落ちていた。
そして、オモチの後ろにももう一匹。

「まーたたびーぃ〜は良〜いニャッとーぅ♪」
全くろれつの回っていないこの猫も鼻にマタタビを刺し、さらにもう一本タバコのように咥えている。

「マル君!?あなたまで何をやってんの!?」
慌てて駆け寄るスズナを完全に無視して、マルと呼ばれた赤毛オトモアイルーは、先ほどオモチが転げ落ちた階段をアイススケーターのように優雅にくるっと2回転ほど回って降りた。

「マル君のご主人がどんニャに凄腕でも、マタタビだけは用意出来ないもんニャー。うちのご主人のユタぽんにはもーっと無理だけどー♪ユタぽんの姉ちゃん様々だニャッ」
オモチはオモチで好き勝手言っている。
酔いどれオトモ2匹が自分達の世界から戻ってこないため、どうすれば良いか分からずスズナはただ見守るしかできない状態であった。

「おネーしゃんにお礼しニャくちゃニャー?」
キレキレなダブルアクセルを決めたにも関わらず、フラフラとした足取りでオモチの肩に寄りかかると、マルはどこからか奇妙なモノを取り出した。

「おネーちゃんにコレあげちゃうニャ!オイラご主人のアイテムボックスからかっぱらってきたニャあー」
そのおネーちゃんがすぐ後ろでオロオロしている事に全く気付かず、マルは取り出したモノをお手玉して遊び始めた。

「ち、ちょっと待ってマル君・・・・確かに私ソレ持ってないから嬉しいけれど・・・・」
手に入れた事が無い素材なのに、マルが危ない手つきでお手玉している謎の頭骨が何なのか、スズナはすぐに気が付いた。何故分かったのか・・・・

 

「タイムリー過ぎるもん!レーシェンの頭だよそれ!」
取り上げようと手を伸ばすスズナを、酔拳のような妙な動きでかわすマル。渡そうとしている本人だとも気付いていないようだ。

遺存種の生態報告書では、レーシェンを召還する"門"は、レーシェンの頭骨を木の枝にくくりつけた"トーテム"と呼ばれるオブジェから発生したと書かれていた。さらに、レーシェンの強化個体は頭骨のみの状態から身体を構成したとも。実際にレーシェンを目にしていないスズナでも、マルがやっていることがなんとも不味い事であるのはすぐに知れた。

「すぐに!ご主人に!返し!なさい!あーもう避けないの!!」
こんな時だけご主人の動きを忠実に真似するマルは、頭骨を奪おうとするスズナの手をことごとく見切っていた。

「うニャーははは!レぇー♪シェンの頭はヘンな骨ぇー♪スカッスカー♪ホネっほねー♪」
ベロンベロンに酔いながらもくねくねと身体をよじらせ避けて避けて妙な唄を歌う。さらには、オモチまでも加わってレーシェンの頭骨をキャッチボールしはじめた。

「ちょっと!植生研究所のすぐ近くなんだから!ホントやめなさい怒るよ!?」
既に怒りながらスズナが叫ぶが、2匹とも聞く耳を持たない。レーシェン出現が最も危惧されていた植生研究所の古代樹がもう目の前にあるのに、へらへらと笑うオトモ猫2匹からレーシェン出現の核である頭骨を奪えないでいる。実は先ほどから、目の前の古代樹から変な臭いが漂ってきているのを、鼻の良いスズナは感じ取っていた。レーシェン出現の前触れに思えてならない。
そもそも、レーシェンの頭骨を頭上に掲げ練り歩く。もはやこれはレーシェン召喚の儀式なのではないだろうか。さらに焦ってスズナが前に出よう、と・・・・

その直前。いつの間にか近づいてきていた総司令の手がぽんとスズナの肩に置かれた。慌てるな、と静かに諭すとオモチとマルを観察する位置まで下がらせた。

「だっ・・・・!大丈夫でしょうか・・・・」

「落ち着け。オモチとマルがここに居るということは、ユタも真田もアステラ内に戻ってきているということだ。既に呼びに行かせた。あの二人が居ればレーシェンが出現しても問題ない。それに・・・・」
言いながら総司令は前方の古代樹を指差した。

「森にある巨大古代樹と、それをアステラに移植して根付いた植生研究所のあの古代樹、組成としては同じだが、決定的に違う点がある。それが、レーシェンの魔法に影響を受けるとするとだな。この臭いからして・・・・」

相変わらず根回しの良い総司令だが、今は少しだけ様子が違った。さきほどからスズナも感じていた妙な臭いに心当たりがあるのか、可笑しくて仕方がないというふうに頬の筋肉を強張らせている。

「多分だが。戦わずに済むかもしれんぞ」
珍しく笑いを含んだ声を出した総司令がまた別の方を指差すと、その先では。

「ふニャあ〜・・・・」
オモチとマルが2匹同時に酔い潰れて倒れこむのが見えた。

「あっ!レーシェンの頭骨が・・・・」
オモチの手からやっと離れたレーシェンの頭骨。ころころと転がると、植生研究所の古代樹が生える池にぽちゃりと落っこちた。もうここまできてはレーシェン召喚の儀式の仕上げにしか思えない。

 

ブブブブブブブ・・・・・・・・

同時に、どこかで聞いたような低く耳障りな音が辺りを包んだ。音は次第に古代樹の方へ近付いていき、黒い煙となって樹を覆った。
それはまるで、中から現れる主役を照らす黒いスポットライトだった。