オトナのオトモ日記

モンハンを主軸とする、ゲームブログです。小説も書いたり、たまに映画鑑賞日記も。雑食性です。

ガンサーの姫

またも、お友達からスズナのイラストをいただきました。以前描いてくれたえびさんの

モンスターの生態 - その14 街のギルカ屋さん - ハーメルン

とは別の方、ちょうさんです。

本人希望により、ここでそのイラストを掲載することは控えますが、例によってお礼の酷いお話を考えてみました。

 

実は、毎回登場人物を増やす度に『キャラ名』に悩んでいます。シュナやスズナ、バルトなどカタカナのキャラ名が多い中、『えび』や『ちょうさん』では流石に違和感がでてしまう。しかしせっかくお礼のお話なのに名前をいじっては申し訳ない。えびさんの時にはニックネームということでなんとか誤魔化しましたが、今回ちょうさんはどうしようかな・・・・と。

そうだ、いっそこの『変わった名前のヒト』が何故新大陸にいるのか、を語るお話にしよう。

 

つまりはあのネタが使えるということだ。むふふ

 

 

 

と、いうことでいつものモンハン小説

モンスターの生態 - ハーメルン

です。最近のお話は『モンスターの』生態ではなく、『ハンター』の生態になりつつありますね。

 

それでは、ちょうさん。よろしくおにがしま。


その15 ガンサーの姫


「よ。ちょうさん久しぶり」

 

片手剣ハンターのマコノフが手を上げて声をかけたのは背中に巨大な武器を背負った、本人は小柄なハンターだった。

 

「Oh・・・・まこのふサン。コン・・・ばんチワ」

 

「分からないからって混ぜちゃイカンな」

 

マコノフにツッコマれた小柄なハンターは、ちょうさん。本名は『張 風爽(チャン・フーソ)』という。極東の地出身のハンターで、老山龍をひたすら追いかけているうちにドンドルマにたどり着き、そのままハンターズギルドに登録、さらには新大陸調査団にまで参加しているという、異色中の異色の経歴を持つハンターだ。言語がほぼ統一されている現大陸でも、あまりに遠い極東の一部地域では別言語が使用されている。ゆえにちょうさんは今のように言葉が若干おかしい。

 

「ん?ちょうさんあんたスラッシュアックス使いじゃなかったっけか」

マコノフが疑問に思ったのは、ちょうさんが背負っている武器だった。ちょうさん愛用のスラッシュアックスという武器は巨大な2枚の刃からなり、両刃の斧モードと片刃の剣モードに変形させながら闘うために、かなり手先の器用さが要求される。

そして、今ちょうさんが背負っているのは砲身の先端に槍の穂先がついたガンランスだった。砲と槍が合体しているという巨大さゆえ、また砲身の中ほどから弾込めをする必要性から、ガンランスは納刀時、つまりハンターが背負っている時は二つ折りに分解されている。

 

「Aah・・・・おと・・としカラ?がんラんスハジメまんた」

そんな、ガンランスの詳しい説明など出来るはずもなく、たどたどしくちょうさんが自分の背中を指差しながら言う。一応、聞き取りはほぼ出来る。だが何故か自分の口から言葉を出すとなると全ての単語が崩壊するようだ。

 

「うん。一応一昨年にはもうガンランスあったけれども多分おとついから、なんだろうな。あと何で最後オニイトマキエイが出てきた」

まわりはそんなちょうさんを面白がり、本人の能天気かつ人懐こい性格もあって、ちょうさんの言葉はおかしくなったまま、受け入れられていた。マコノフもだいたい慣れた。

 

「それにしても、へぇー。別武器に手を出すかぁ。スラッシュアックス一筋だったのにな」

感心したようにマコノフ。ハンターは闘うモンスターによって、属性や切れ味など最適な武器を選ぶ。同じスラッシュアックスでも麻痺属性や龍属性、切れ味優先や会心特化など何本も所持しなければならない。当然その数だけ製造費用、強化費用と莫大な資金、そして素材が必要となる。1つの武器種に絞った狩猟生活をしていてもかなりの費用がかかるので、複数種使いこなすのはそれなりに珍しい。

 

「・・・・ニャッ」

不意に、二人が話している横から低い鳴き声と共に小さい手が出てきた。大きな肉球が付いた親指(?)を立てて静かにポーズを取っているのは、ちょうさんのオトモ猫、極東アイルーの大和(ダー・ヒェ)である。新大陸の皆からはヤマト君と呼ばれている、主人とは違い寡黙な猫である。灰色の剛毛と、眼から頬にかけて出来た大きな二本の爪痕から、歴戦の強者として別格の風格と渋さを備えている。可愛いモノ好きのスズナ達女性ハンターのみならず、渋さを評するソードマスターからも気に入られている、主人とは別の意味での人気者だ。

 

「ヤマト君か。相変わらず静かなくせに存在感やたらあるねぇ」

マコノフはアイルーよりもさらに小柄な極東アイルー、ヤマト君の目線に合わせてかがむと、手を伸ばし・・・・そして途中で手を引っ込めた。風格がありすぎて気軽に頭を撫でられないのだ。

 

「やまもとサン、てとるーと、しゃべれるよう なりマスた」

「しゃべれないから寡黙なわけじゃないのか」

ヤマト君、という呼び方には慣れていないのか本来の読み方・・・・ではなく、でもヤマトではなく山本さんと呼んでいるちょうさん。

ヤマトもそれを受け入れているようで、細い目を開くことなく微動だにしない。

 

「で?何でガンランス始めたんだ?」

改めてマコノフが聞くと、またちょうさんは一生懸命言葉を探しはじめた。色んな方向に視線を巡らし、頭をフル回転させながらも・・・・

 

「がんらンスを Aah・・・・トテモ ろまんシテくる おトモダチが、いるのでス」

結局は間違える。つっこまれずに人と話すことが全く無いのだ。

 

「ほぅ、ロマンときたか。正解はジマンしてくるお友達、だと思うがロマンのほうが良い言葉だな?俺も今度そう言うことにしよう」

とはいえ、珍しく好意的なつっこみで済んだようだ。

 

ガンランスをロマンしてくる友人・・・・ガンランスを使うヒト、ガンサー・・・・もしかして」

マコノフには、ちょうさんをガンランスの道に引き込んだ人物が誰か、心当たりがあるようだ。

 

「ユタさんでス。ガンサーの・・・・Aah・・・・ヒメでス」

「人、くらい単語出てこいよオタサーの姫みたいになってんぞ」

ユタは男なのに、と苦笑いしながらつっこむマコノフ。

 

「ユタのやつ、意地悪だから肝心のとこ教えてくれないだろ。変なとこ嘘ついたりするしな」

共通の友人を軽くディスり、自身もほとんど使ったことはないが分かることなら教えるよ、と言うマコノフだったが。

 

「ありガトウございマス。イマは、りゅうヲ たべる やりかた、サガシてます」

「・・・・は?」

予想外の質問が飛んできた。

 

「龍の食い方?それ別世界の話?あっそうか食材のリュウノテールか?ガンランス向きの食事の組み合わせ?」

今度はマコノフのほうが、ちょうさんの言葉を理解しようと一生懸命頭の中で言葉を組み合わせ始めた。

 

「NoNo・・・・オショクジケンのはなシじゃない、でス。ガンらんスのはなシでス」

 

「ケンはいらん。お食事、でいい。汚職事件て言わせたいユタの影響を感じるぞ」

的確につっこみを入れつつも、再び視線を虚空に巡らせマコノフはガンランスと『龍の食い方』について考え込む。

 

なにか、引っ掛かるものはある。ガンランス・・・・龍・・・・気軽に教えるよと言ったものの、本当に使わない武器種なので答がなかなか閃かない。

 

「うーん・・・・」

腕組みしたまま首をかしげ、動かなくなってしまったマコノフ。すると

 

「・・・・ニャッ」

またしても横から、ヤマトが大きな肉球を出してきた。

 

「・・・・ニャッ・・・・ニャッ」

左手を大きく前に突き出し、今度は逆に半歩下がるほどに大袈裟に引き戻す。ヤマトは無口にジェスチャーで解説してくれているようだ。

これは・・・・マコノフの記憶に引っ掛かっていたものが少しずつはっきりしてきた。ガンサーである友人、ユタと共に狩りに行くときこんなヤマトのような動きをしていたような・・・・

 

「・・・・ちょうさん」

不意に、マコノフはしゃがみこみ地面に文字を書き始めた。

 

「もしかしてあんた、コレのこと言ってんのか?」

マコノフが立ち上がった時、地面に書かれていたのは

 

「Oh!コレでス。

リュウクイのホウホウ」

 

「これ『りゅうこうほう』って読むんだよ・・・・」

『龍杭砲』であった。こりゃ、狩りに行きながら実地訓練で覚えてもらうしか無いな・・・・と、ぐったりうなだれるマコノフだった。

 

「・・・・ニャッ」

またも横から、ヤマトがマコノフの肩をポンと叩き親指の肉球を見せつけてきた。

 

「おう、ヤマト君・・・・やっぱりご主人なんとかしてくれ」

今度こそヤマトの頭を撫でながら、マコノフはちょうさんの背中のガンランスをごんごんと小突いていた。