はざまのくに
エルデンリングを題材としたお話その2、完成しました。同じエルデンリング二次創作の「王様のなやみごと その2」があるため、短編集「はざまのくに」に改題し、その第二話という扱いに。
とゆーことで、「トレントジョッキーメリナ」です。かなり短いお話になったので、そのままこの日記にも書いておきましょう。
トレントジョッキーメリナ
…あの人は、なっていない!
辺りに誰も居ないことを入念に確認してから、私は荒野の端っこでひとり、谷に向かいぶつけようのない不満をぶちまけた。
私は、メリナ。母から託された使命のため、この狭間の地を旅している。
一人旅ではない。生身の体を持たない霊体の私には、使命を果たすことは不可能なのだ。それは私の相棒、霊馬のトレントも同じ。
だから、私は不死であるあの人に付いて旅をしている。あの人は、とても強く、優れた褪あせ人だ。高速移動の手段として、トレントを提供し使命への協力を願った私の判断は、誤りではなかったのだろう。けれど…
あの人は今日も、トレントにロアレーズンを与えなかった。あぁ可哀想なトレント、お腹すいてないかな。ロアの実で力をつければ、もっと速く走れると思うの。
あの人は今日も、70キロを超える重さの鎧兜を着込んだままトレントにまたがった。あぁ可哀想なトレント、重いよね。私一人でも、背に乗ったら本当の速さで走れなかったのに。あれだけ背負ったら…
あの人は今日も、霊気流をジャンプにしか利用しなかった。あぁ可哀想なトレント、たまには大地から吹き出す霊気を好きなだけ全身に取り込んでリフレッシュしたいよね。
可哀想なトレント、可哀想なトレント。私が今でもあなたの相棒だったならきっと…
…あ、あの人が崖淵でトレントから下りようとしてる。そこでトレントから下りたら危ないんじゃないかな…
…あ、落ちちゃった。あの高さは…助からないよね。ゆーだい…
褪せ人は、不死とはいっても死んでしまってから復活するのに長い時間がかかる。この狭間の地ではあらゆる場所で時間がゆがんでいるので、本人達は時間経過を自覚していないけれど。
あの人が復活するまでの間、私とトレントは待ちぼうける事になる。はやく黄金樹に行きたいのに…
あぁでも、あの人が死んでる今なら。また私がトレントに乗ることができる。私がトレントに乗るのなら…
私なら、トレントの栄養状態を完璧に管理するのに。朝は軽めのロア・レーズンでゆっくり身体をあたためて、一走りしてからフローズン・ロア・レーズンを食べさせればクールダウンにもなる。早めの夕飯にはスイート・ロア・レーズンをたっぷり。これで霊筋肉を確実に作っていくの。
もちろん、トレントの背に乗る私も栄養管理で減量。今なら正しい姿勢も身につけたから、トレントの背中に乗っても速度を落とさず最高速度が出せるはず。
そして、霊気流は下らない大ジャンプなんかに使わないわ。トレントの全身に取り込まれた霊気を、前方加速に利用させてあげられるのは私だけの力。峠のきわっきわを攻めて攻めて攻めてあげる。
あぁ最高なトレント、私のトレント。今日こそ一緒に、風になろうよトレントなんで後ろに下がるのトレント?私たちは伝説になるのトレントどうして背中に乗せてくれないのトレント?イニシャルMと呼ばれたあの頃に戻るの逃げないでトレント、あぁトレントトレントそんな追い詰められたリスのような目をしないでトレント。
…あ、あの人が起きちゃった。またトレントに乗れなかった。でもいいの。私諦めない。トレントと一緒にきっと、テッペン取ってみせる。