100万回イキったねこ
最近お話を思い付く頻度が異常。今度はモンハンワールドアイスボーンで復活した、あの人気モンスターのお話です。
かなり短くまとめることが出来たので、本文ごとブログにのせてしまいましょう。童話調に書けたお話はまたも自信作です。なんてね
今回は過去のお話
モンスターの生態 - その21 王様のなやみごと - ハーメルン
ともリンクしているので、こちらも是非どうぞ
100万回イキったねこ
100万回イキった猫がいました。猫はいたってフツウの小さなクロネコでしたが、いつでも自分を強く見せようと必死でした。
あるとき、猫は言いました。
「オレはいつもモテモテだけど、硬派だから毛はギンギンなんだぜ」
猫はもともとはサラサラのキレイな黒毛でしたが、強く見られる(と思い込んでいる)ために、イキって毛を全部逆立てて剛毛に見せかけていました。特に頭のてっぺんとシッポの先は念入りに逆立てて、シッポの逆毛は地面に突き刺さるほどでした。
またあるとき、猫は言いました。
「オレのシッポ攻撃なら、どれだけモンスターが群がってこようとイッシュンで全滅させられるんだぜ」
そう言うと、猫はぐぐぐ…と身体をヒネって力を溜め込み、シッポごと身体をぐるん!と1回転、反対方向にもう1回転。
しかし、イキって無理な振り回し方をしてしまったので、シッポの全部の関節を脱臼してしまいました。関節がハズれたシッポは長くナガ〜く伸びてしまいましたが、猫はイタいのをこらえてシッポをピンと張ってのしのし歩いていきました。
ナガく伸びたシッポは元に戻りませんでしたが、またあるとき猫は懲りずに言いました。
「オレの猫パンチはトクベツ製。あまりにスルドいパンチだから、カスっただけでもズバッと斬れちまうんだぜ」
今度は猫は入念に準備をしていました。前肢の肉球横からヒジ関節あたりまでの毛を、アブラを塗りながら何度も何度もナデつけ硬くまとめて尖らせてしまいました。ただ、またイキってアブラを塗りすぎたものだから、垂れたアブラが脇へ溜まって、皮膜になってしまいました。
そしてまたあるとき、猫はついに言ってはいけないコトを言ってしまいました。
「実はオレ、こんな猫のカタチは仮の姿なんだ」
「ホントは、飛竜なんだぜ」
言ったとたん、猫のカラダは大きくふくれあがり、イキったコトばかり言う口は相応しいカタチに左右に大きく裂けてしまい、アブラで出来た皮膜はホンモノの翼膜に、研いだ前肢の毛もホンモノの刃翼に変化しました。
こうして、猫はとうとうナルガクルガになってしまいました。
スルドい刃翼はいつだって密林を歩くジャマになってしまいますし、妙に長いシッポは脱臼したままでずぅっとイタみます。ガマンのあまり眼は充血して真っ赤に光るようになってしまいました。さらにカミナリに弱くなってしまったので、同じ密林に棲むジンオウガにいつもオビエて暮らすコトになってしまいました。
それでも、猫(ナルガクルガ)はイキり続けました。
「アルバトリオン?クシャルダオラ?オレにかかればヨユーだよ、ヨユー」
おしまい。
「な?やっぱりヘンだろ、この絵本」
新大陸のハンター、筋肉隆々な調査班リーダーは、その見た目になんとも似つかわしくない絵本を読み終わると、顎に手を当てて眉をひそめ、いぶかしげにぼやいた。
「リーダーが子供の頃に、生態研究所の竜人じいちゃん先生にもらったんでしたニャ」
一緒に首を傾げているのはベテランオトモ猫のコロ。
「ナルガクルガが新大陸で発見されたのはつい最近。でも現大陸で描かれた絵本にしては、前に見せたアンジャナフの絵本と絵柄が同じだし、新大陸に到着してから描いたにしては、ナルガクルガの絵がリアル過ぎないか?」
「やっぱりあのじいちゃん先生が描いたと考えるのが妥当…でも…ナゾが多いですニャあ、あのじいちゃん…」
この新大陸、どんなイキモノがどんな進化をしたって、不思議やないんやで。
直接聞いてもまともに答えないじいちゃん先生。いつものように誰に言うでもない声音で、ぶつぶつつぶやいてるだけであった。